![]() 人形 例えば人形のように 何も考えずに済むのなら それでシアワセつかめるのなら 人が人である理由なんてない 無機質な瞳が 私を捕らえて放さないから 届かないと知っていて それでも叫び続ける いくら叫んだって 答えは返ってこないよ それは人間じゃない ただのレプリカなのだから 足首 絡みつく手の幻覚に 怯えながら過ごす夜は 白い月を眺めながら 眠りに落ちるのを待っている 許しを乞えば何か変わるのだろうか いっそ忘れられたらシアワセだろうか 君だけがいなくて 僕の罪は残って 縋る手を取れなかった僕は 空の上 親愛なる貴方へ 元気にしていますか? ちゃんと食べていますか? 私の声は届いていますか? そこから私の姿は見えますか? 貴方の傍へ行きたいのです 今すぐにでも飛んで行きたいのです 貴方のいない色褪せた世界など 私にはなんの価値もないのに 元気にしていますか? 私の想いは届いていますか? 空の上の世界はどうですか? 迷子 絶対にこの手を放さないと言ったのに ひとりで行ってしまったあなた 遠ざかってゆくその背中を 追いかける術はもはや持たない 人の波に巻き込まれ 混乱の渦に飲み込まれ 行く先を失くした迷い子は 差し出された手にも気づかない 螺旋 君の創り出す螺旋に囚われて 逃れようともがく影がある 僕もかつてはそうだったね 弄ばれていることにも気づかずに 本当にそれで満足しているの? 人の愛し方を知らない君 嘘の上塗りをする程に 真実の愛からは遠のくというのに 白百合 もっと胸を張っていいんだよ 君は野に咲く白百合よりも ずっと白く美しいのだから その純真さを失わないで 汚れ役は僕一人でいいんだ あの花でさえも凛と咲くのに 君の瞳の曇るのは見たくない 黒薔薇 闇に溶け込むように そっと咲く 静かに開いた花弁は 見る者を惑わす その妖しき姿に 深淵たる黒に 目を奪われて 手を伸ばす 「棘」という名の罠が 待ち構えていることも知らずに 遊園地 もらった風船は飛んでいった 手を伸ばしても届かないほど 高く 母さんはぼくを置いていった 手を伸ばしても届かないほど 遠く 観覧車も メリーゴーラウンドも 変わらず回り続けているのに あの子も その子も 楽しげに笑っているのに ぼくだけがこの世界で ひとりきり 秘密 二人だけの楽園へ行こう 世界が終わるその前に しっかりと手を取り合って 君と僕しか知らない世界へ 憧れ あまりに遠い存在の 貴方のことを思う度 高鳴る胸の鼓動さえ 伝えることは叶わない 十字架 消えることのない罪は 重い十字架となって 私の背にのしかかり 胸にもクルスを提げる 覚悟していた筈だ 罰は甘んじて受け入れると 贖い切れぬとしても 自ら選んだ道なのだから 哀姫 街の外れにひっそりと佇む 古城の幼き主 その名は 哀姫 天涯孤独の少女は いつしか囁かれるようになった 「孤独な少女、哀姫よ」と 己の名すら忘却し 瞳に哀しみを湛えた少女 「哀れな姫よ、哀姫よ」と 時計兎 兎の彫り込んである懐中時計は 今ではもう時を刻むことはない 人はそれをガラクタと言うけれど 僕にとっては宝物なのだ 母が大切に身に付けていた たったひとつの形見なのだから 亡骸 月の光に照らされて 陳列された亡骸の 青白く輝く様を うっとりと見つめている 死んだ後まで愛したいのか 死んだ跡しか愛せないのか 歪んだ愛の形だけれど 彼女はそれで幸せなのだ そう それは ネクロフィリア 独り遊び 川辺で独り遊ぶ子の 無邪気な笑顔の裏側に 孤独が潜んでいることに 愚かな大人は気付かない サヨナラ 夕焼けに包まれたオレンジ色の街で 去りゆくあなたの背を見送った こみ上げる涙 堪え切れず 一筋 頬を伝って落ちた どうかサヨナラは言わないで 二人の道は分かれてしまったけれど いつかまた巡り会える時を信じて この道を歩き続けるから 教会 小高い丘の上に 小さな教会がありました 小さな少年は 小さな身体に たったひとつの大きな願い事を抱え 毎日お祈りに行きました 「かみさま マリアさま イエスさま どうか ぼくのおかあさんを かえしてください」 大きくなった小さな少年はやがて 人の命の尊さを知るのでした 墓標 今日初めて君の墓標の前に立つ どうしても信じられなくて 心の踏ん切りがつかなくて 今更、と君は罵るかもしれないけれど 例えそれが事実でも 受け入れられない自分がいて こうしてここに来なければ 現実を見つめられない気がして 今、僕は初めて君の墓標の前に立つ 君はもういないのだと ああ、本当に君はもういないのだと ただ静かに涙を流した 掃溜め 捨てられた人形を拾いに行く 拾った人形はまた捨てられる いつか自分も捨てられるのではないかと 怯えながら また拾いに行く 磔 磔の刑に処されたイエスは 死際に何を思っただろうか 今、死の淵に立っているアイツは ただ、口の端で笑ってる 許しを乞うこともせず 泣き喚くこともせず ただ、磔にされたまま 死の間際にアイツは 何を思ったのだろうか それは推し量りようもないけれど ただ、ひどく格好良いと思ったのだ 殺害 今までの自分を殺し 新しい自分を迎え入れる けれど 過去に積み重ねた罪が消えることはなく 過去に私の歩いた跡が消えることはなく 過去に負った無数の傷痕が消えることはなく 今までの自分を殺し 新しい自分を殺し もう 後には何も残らない 彼岸花 一面に彼岸花の咲く中を歩く ふわり ふわりと 幻のように揺らめいて ゆらり ゆらりと 誰も行く先は知らず けれど導かれるかのように それが運命であるかのように ゆらり ふわ ふわり 手首 身を翻し去りゆく君を 引き止めようと掴んだ手首は 思いの外細くて 待って欲しいなんて言えなかった 欠如 理性が働かないのなら 獣と同じだ 感情を持たないのなら 人形と同じだ 生きる事に価値を見出せないのなら 死んでいるのと同じだ # by vr_purewhite | 2005-01-09 00:00
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